童謡伝道マガジン「ふんふん」H・U・N企画

ダークおじさんと童謡の世界

2016.4.9ダークおじさん

童謡・唱歌から学ぶこと多し・・


 今年の春、大阪市立の中学校の卒業式に参列する機会がありました。
式は「君が代」「大阪市歌」「校歌」を歌って、厳粛な雰囲気の中で始まりました。もっとも生徒たちはこれら3曲の中で、一番大きな声で歌ったのが校歌でした。
きっと、大人になっても母校の校歌を歌うと青春時代を思い出すのでしょう。私も別の中学校ですが、3番まで歌うことが出来ます。

 さて、この日の式で私が大きく歌ったのは「大阪市歌」でした。

大阪市歌

1、高津の宮の昔より
  よよ(代々)の栄を重ねきて
民のかまどに立つ煙
  にぎわいまさる大阪市
 にぎわいまさる大阪市

2、なにわの春のあさぼらけ
生気(せいき)ちまたにみなぎりて
  物みな動くなりわいの
  力ぞ強き 大阪市
 力ぞ強き 大阪市

3、東洋一の商工地、
咲くやこの花さきがけて
四方(よも)に香りを送るべき
  務(つとめ)ぞ重き大阪市
 務ぞ重き大阪市

 大阪市歌が制定されたのは大正10年、中之島の市庁舎建設を機に公募したものです。
全国から、2398編もの応募があり、森鴎外、幸田露伴ら5氏が審査にあたり、香川県三豊中学校長の堀沢周安氏の作詞が入選。作曲は東京音楽学校助教授の中田章氏です。(大阪市のHPから一部転載)

 私は小・中学校、そして高校、12年間を大阪市立の学校で過ごしましたが、この市歌を知ったのは、大人になってからですが、これほど素晴らしい曲があったことを大阪市民の1人として、心から誇りに思います。
 作曲は「♪春は名のみの・・」で始まる、日本人なら誰でも知っている名曲「早春賦」を作曲した中田章氏です。そして、作詞は堀沢周安(ちかやす・しゅうあん)氏。

 堀沢周安のことを調べると、唱歌「田舎の四季」の作詞者でもありました。作曲家は不詳のままで、尋常小學唱歌(第四學年)に載っていました。(大正元年)

田舎の四季(※著作権消滅)

1.道をはさんで 畑(はた)一面に
  麦は穗が出る 菜は花盛り
  眠る蝶々(ちょうちょ) 飛び立つ雲雀(ひばり)
  吹くや春風 たもとも軽く
  あちらこちらに桑つむ少女(おとめ)
  日まし日ましに春蚕(はるご)も太る

2.ならぶ菅笠(すげがさ) 涼しい声で
  歌いながらに 植え行く早苗(さなえ)
  ながい夏の日 いつしか暮れて
  植える手先に 月かげ動く
  帰る道々 あと見かへれば
  葉末(はずえ)葉末に 夜露が光る

3.二百十日(にひゃくとおか)も 事なく済んで
  村の祭の 太鼓がひびく
  稲は実がいる 日和(ひより)は続く
  刈って広げて 日に乾かして
  籾(もみ)に仕上げて 俵に詰めて
  家内そろって 笑顔に笑顔

4.そだを折りたく いろりの側で
  夜はよもやま 話がはずむ
  母が手際の 大根なます
  これも田舎の 年越しざかな(肴)
  棚の餅引く ねずみの音も
  更けて軒端(のきば)に 雪降り積る

 春夏秋冬の生活の様子が分かります。1番の春は、養蚕が盛んであったことが分かります。2番の初夏の田植えの様子、3番は秋、稲刈りの様子、4番の冬では、冬の準備と年越しの準備に追われる家族の様子が歌われています。
 「田舎の四季」は、ダークダックスらが歌っていて、うたごえ仲間が「この曲が好き」と、教えてくれたのです。

 「大阪市歌」は、まさに歌詞のとおり、「大大阪(だいおおさか)」の元気であった頃の時代を描いています。

 童謡伝道師として各所で童謡や唱歌をみんなで歌っていますが、作詞作曲が誰なのか、生まれたのは何年で、その時代背景は?など、調べたことをご紹介しています。歌にまつわるエピソードなども調べるとどんどん興味が湧いてきて楽しいですね。童謡・唱歌から学ぶこと多し・・。

文/ダークおじさん 筒井幹夫(65)
学生時代は、グリークラブ(男声合唱団)に所属。卒業後、青少年育成専門団体に携わり、学校キャンプ、ファミリーキャンプを担当する。ここで、歌が大きな力になることを体験する。
現在、ふんふんさろんシニアスタッフ。大阪童謡くらぶ会員、歌声喫茶ピープルズリーダー。