馬頭観音さま
	馬頭観音さま
文 もり・けん
 心の優しい清八という男がすんでいたと。
 ある夜、旅の坊さんがやってきて一夜の宿をたのんだそうな。
 清八は、自分のふとんを坊さんに貸してやり、自分は納屋のわらの中で寝ることにしたんじゃと。
 夜中のこと、坊さんはふとんを持って逃げだそうとしたそうな。
 馬小屋まで来たとき、何かに引っ張られたので、見ると、ふとんのはしを、馬がくわえて言うたそうな。
「わしは、長いこと、この家に世話になっておる。お前を見逃すわけにはいかん」
 坊さんはびっくりして腰を抜かしてしもうたんだと。
 馬は続けて言うたそうな。
「坊さん、たのみがある。わしは、もう老いぼれて死ぬのが近い。わしが今度、人間に生まれ変われるように、とむらってもらいたい」
「おた、おたすけを。なんでもします」
 坊さんはまたびっくり。あわてて部屋へ戻ると、じっと朝まで待っていたそうな。
 朝になって、清八が起きてくると、坊さんは手をついて昨夜のことを話してあやまったそうな。
 さてさてほんとのことかいなと、二人は馬小屋へ行ってみると、馬はもう死んでおったそうな。
 二人は、近くの寺へ行くと、馬の供養をたのんだそうじゃ。そして、頭の上に馬の頭を載せた石の観音さまをたてたそうな。
 この観音様は、馬頭観音と呼ばれ、今も静岡の金谷にある洞善院というお寺に残っており、村の人に馬の守り神として、大切にされているそうな。
* 私が今から38年前、31歳の時に、(社)日本馬事協会の依頼により作った「うまのおはなし」に掲載されている物語四つのうちの一つです。
* おまけに、私の詩の中でも、教科書や、詩集、塾の教材など、あちこちで使われている詩を紹介させていただきます。
あいおえおはようもりのあさ
もり・けん作
あいおえおはよう もりのあさ
かきくけこぎつね おきてきて
さしすせそうげん かけまわる
たちつてとリたち とびたって
なにぬねのうさぎ なかまいり
はひふへほしでて もりのよる
まみむめももんが おきてきて
やいゆえよざるも かけまわる
らりるれろばたち ゆめのなか
わいうえをこすな しずかにね
んんんんんんんん
 
 
                     
                     
                     
                     
                    