童謡伝道マガジン「ふんふん」H・U・N企画

今夜のお話なあに

2021.3.1今夜のお話なあに

馬頭観音さま


馬頭観音さま
文 もり・けん

 心の優しい清八という男がすんでいたと。
 ある夜、旅の坊さんがやってきて一夜の宿をたのんだそうな。
 清八は、自分のふとんを坊さんに貸してやり、自分は納屋のわらの中で寝ることにしたんじゃと。
 夜中のこと、坊さんはふとんを持って逃げだそうとしたそうな。
 馬小屋まで来たとき、何かに引っ張られたので、見ると、ふとんのはしを、馬がくわえて言うたそうな。
「わしは、長いこと、この家に世話になっておる。お前を見逃すわけにはいかん」
 坊さんはびっくりして腰を抜かしてしもうたんだと。
 馬は続けて言うたそうな。
「坊さん、たのみがある。わしは、もう老いぼれて死ぬのが近い。わしが今度、人間に生まれ変われるように、とむらってもらいたい」
「おた、おたすけを。なんでもします」
 坊さんはまたびっくり。あわてて部屋へ戻ると、じっと朝まで待っていたそうな。
 朝になって、清八が起きてくると、坊さんは手をついて昨夜のことを話してあやまったそうな。
 さてさてほんとのことかいなと、二人は馬小屋へ行ってみると、馬はもう死んでおったそうな。
 二人は、近くの寺へ行くと、馬の供養をたのんだそうじゃ。そして、頭の上に馬の頭を載せた石の観音さまをたてたそうな。
 この観音様は、馬頭観音と呼ばれ、今も静岡の金谷にある洞善院というお寺に残っており、村の人に馬の守り神として、大切にされているそうな。

* 私が今から38年前、31歳の時に、(社)日本馬事協会の依頼により作った「うまのおはなし」に掲載されている物語四つのうちの一つです。
* おまけに、私の詩の中でも、教科書や、詩集、塾の教材など、あちこちで使われている詩を紹介させていただきます。

あいおえおはようもりのあさ
もり・けん作

あいおえおはよう もりのあさ
かきくけこぎつね おきてきて
さしすせそうげん かけまわる
たちつてとリたち とびたって
なにぬねのうさぎ なかまいり
はひふへほしでて もりのよる
まみむめももんが おきてきて
やいゆえよざるも かけまわる
らりるれろばたち ゆめのなか
わいうえをこすな しずかにね
んんんんんんんん


 
















文/もり・けん
1951年大阪市生まれ。
長年勤めた幼児教育出版社を
43歳で退社し、モンゴルに渡る。
自然に添うように生きる遊牧の暮らしを学び帰国。以後モンゴルの正しい理解と亡くしてしまった日本の心を取り戻せと訴え続ける。

日本の童謡の普及のため、作詞(新しい童謡の創作)、演奏(昔からある良い童謡の伝承)の両面で展開、全国各地を講演、ハーモニカによるコンサート活動は海外にも及びモンゴルを始めロシア、中国、北欧のフィンランドやスウェーデンなどの子供たちとも交流している。

文部科学省の財団法人すぎのこ文化振興財団の環境ミュージカル「緑の星」をはじめビクター「ふしぎの国のアリス」などを発表、絵本、童話、童謡など子供のための創作活動をしている。

現在、日本音楽著作権協会会員、日本童謡協会会員、詩人、ミュージカル作家、作詞家、ハーモニカ奏者。梅花女子大学、朝日カルチャーセンター、読売文化センター、ヤマハ音楽教室などの講師を勤める。