童謡伝道マガジン「ふんふん」H・U・N企画

今夜のお話なあに

2017.8.9今夜のお話なあに

クラゲのお使い

クラゲのお使い

 竜宮城には乙姫様がいます。乙姫様はオトヒメエビというエビなのです。そして、一応そこはお城なので、お殿様もいます。お殿様は、乙姫様のお父様ですからブラックタイガーというエビですかね。
 さて、ある日のこと、乙姫様が熱を出しました。何日も熱は下がりません。そこでイシモチの医者を呼んで診てもらいました。
「よく効く薬はあります。それは猿の生き肝です」
 お殿様は家来の中から、クラゲを選び、猿の生き肝をとってくるように命令しました。クラゲは、生き肝が何なのか知りませんでしたから、猿に聞けばいいと思って猿島に行き、1匹の猿にいいました。
「竜宮の乙姫様が会いたがっています。あなたをお迎えにきました」
と、海の上に連れて行きました。
「猿さん、あなたは生き肝を持っていますか?」
「もちろん持ってはいるが、それを聞いてどうするのかね?」
「実は・・・・猿さんの生き肝が欲しいのです」
 クラゲはそのまま話してしまいました。猿は考えました。
「生き肝はあげてもいいが、置いてきてしまったので、取りに帰りたいが」
「そうか、では早く取ってきてください」
 クラゲは島に戻り猿をおろしました。
 待てど暮らせど、猿は戻ってくることはありません。
クラゲは仕方なく竜宮城に帰り、あったことをお殿様に話しました。
「この役立たず」
怒ったお殿様はクラゲの全身の骨を抜いてしまいました。
 それ以来クラゲには骨がなくなったのです。

文/もり・けん
1951年大阪市生まれ。
長年勤めた幼児教育出版社を
43歳で退社し、モンゴルに渡る。
自然に添うように生きる遊牧の暮らしを学び帰国。以後モンゴルの正しい理解と亡くしてしまった日本の心を取り戻せと訴え続ける。

日本の童謡の普及のため、作詞(新しい童謡の創作)、演奏(昔からある良い童謡の伝承)の両面で展開、全国各地を講演、ハーモニカによるコンサート活動は海外にも及びモンゴルを始めロシア、中国、北欧のフィンランドやスウェーデンなどの子供たちとも交流している。

文部科学省の財団法人すぎのこ文化振興財団の環境ミュージカル「緑の星」をはじめビクター「ふしぎの国のアリス」などを発表、絵本、童話、童謡など子供のための創作活動をしている。

現在、日本音楽著作権協会会員、日本童謡協会会員、詩人、ミュージカル作家、作詞家、ハーモニカ奏者。梅花女子大学、朝日カルチャーセンター、読売文化センター、ヤマハ音楽教室などの講師を勤める。