童謡伝道マガジン「ふんふん」H・U・N企画

今夜のお話なあに

2018.11.4今夜のお話なあに

猿蟹合戦

 蟹がおにぎりを拾いました。そこに猿が来て言いました。
「蟹さん、私の柿の種と取り替えませんか?」
「猿さん、柿の種は食べられませんよ」
「でも、柿の種を植えると木になり、実がいっぱいなる。そうすれば腹いっぱい食べられますよ」
「それもいいな」
と蟹は取り替えました。
 蟹は柿の種を植えて水をやると、かわいい芽を出しました。そしてそれはぐんぐん大きくなって木になりました。それから見る見るうちに、柿は大きな実をつけました。
「早く食べたいな。でも私には取れないなあ」
 すると猿がやってきて
「私が取ってあげましょう」
というが早いが、猿はするすると木に登り、柿の実を食べました。でも蟹にはくれません。
「猿さん、私にも柿をくださいな」
というと、猿は青くてかたい柿の実を蟹に投げつけました。蟹はかたい柿の実が当たってつぶれてしまいました。ぺちゃんこになった蟹のお腹から子蟹たちががしゃがしゃ生まれました。子蟹たちは親の仇を討とうと話しました。そこに、栗と蜂と牛糞と臼が来ました。
「そんな悪い猿は懲らしめないといけない」
 そして猿の家にそろって向かいました。
 猿の家は留守でした。子蟹たちは水桶の中、栗は囲炉裏の中、蜂は梁の上、牛糞は土間、臼は屋根に隠れました、
 猿が家に戻ってきて、囲炉裏で体を暖めようとすると、「ぱちーん!」。
 真っ赤に焼けた栗が猿に飛びかかりました。
「あちち・・・み、水ぅ」
 猿は水桶に走ると、そこにいた子蟹たちが猿の耳や鼻、手やしっぽまで自慢のはさみでチョッキン。
 次に蜂が梁の上から降りてきて、思い切り猿の尻に突き刺しました。
「いてててて」
 猿が土間から外に出ようとして、「つるーん」。
 牛糞ですべり、表に飛び出しました。
 最後に、臼が屋根から猿の上に、「どすーん」。
 猿はぺしゃんこに潰れました。子蟹たちは親の仇を討つことができました。

文/もり・けん
1951年大阪市生まれ。
長年勤めた幼児教育出版社を
43歳で退社し、モンゴルに渡る。
自然に添うように生きる遊牧の暮らしを学び帰国。以後モンゴルの正しい理解と亡くしてしまった日本の心を取り戻せと訴え続ける。

日本の童謡の普及のため、作詞(新しい童謡の創作)、演奏(昔からある良い童謡の伝承)の両面で展開、全国各地を講演、ハーモニカによるコンサート活動は海外にも及びモンゴルを始めロシア、中国、北欧のフィンランドやスウェーデンなどの子供たちとも交流している。

文部科学省の財団法人すぎのこ文化振興財団の環境ミュージカル「緑の星」をはじめビクター「ふしぎの国のアリス」などを発表、絵本、童話、童謡など子供のための創作活動をしている。

現在、日本音楽著作権協会会員、日本童謡協会会員、詩人、ミュージカル作家、作詞家、ハーモニカ奏者。梅花女子大学、朝日カルチャーセンター、読売文化センター、ヤマハ音楽教室などの講師を勤める。