童謡伝道マガジン「ふんふん」H・U・N企画

今夜のお話なあに

2020.1.1今夜のお話なあに

一休とんち話より お正月はめでたくない

 初詣のお客さんでにぎわう町の通りを、汚い身なりのお坊さんが長い竹ざおを一本をかついで歩いてきました。
その竹ざおの先のようには、白い骸骨がぶら下がっていました。通り過ぎる人々は、薄気味悪がって、お坊さんを避けて、あやしい目で見ていきました。
 お坊さんは、とんちで有名な一休さんでした。
 一休さんは骸骨をかついで、町中をどんどん歩いていき、この町で一番のお金持ちの、銭屋徳兵衛さんの家に来ると、
「新年のごあいさつにまいりました!」
と、言いました。
 家の中から徳兵衛さんが出て見ると、汚い身なりの一休さんが骸骨をつけた竹ざおを持って、立っていました。
 徳兵衛さんは腰をぬかして、震えながら言いました。
「一休さん、正月に骸骨を持ってくるとは、縁起が悪いじゃないですか!」

 一休さんは言いました。

「徳兵衛さん、正月が来ると、みんな一つずつ年をとりますよ。ということは、正月が来るたびに、それだけ死が近づいているということですね。
だから、正月といって、浮かれてもいられない。だれでも必ず、いつかは死に、こんな骸骨になるのですからね。
生きているうちに、いいことをいっぱいしてください。そうすれば、あなたは極楽へ行けると思います。
あなたは、大金持ちです。あまっているお金は困っている人たちのためにお使いなさい」

 大金持ちの徳兵衛さんをはじめ、町中の大勢のお金持ちが一休さんの教えを守ったと伝えられています。

(一休宗純、1394.2.1-1481.12.12)

文/もり・けん
1951年大阪市生まれ。
長年勤めた幼児教育出版社を
43歳で退社し、モンゴルに渡る。
自然に添うように生きる遊牧の暮らしを学び帰国。以後モンゴルの正しい理解と亡くしてしまった日本の心を取り戻せと訴え続ける。

日本の童謡の普及のため、作詞(新しい童謡の創作)、演奏(昔からある良い童謡の伝承)の両面で展開、全国各地を講演、ハーモニカによるコンサート活動は海外にも及びモンゴルを始めロシア、中国、北欧のフィンランドやスウェーデンなどの子供たちとも交流している。

文部科学省の財団法人すぎのこ文化振興財団の環境ミュージカル「緑の星」をはじめビクター「ふしぎの国のアリス」などを発表、絵本、童話、童謡など子供のための創作活動をしている。

現在、日本音楽著作権協会会員、日本童謡協会会員、詩人、ミュージカル作家、作詞家、ハーモニカ奏者。梅花女子大学、朝日カルチャーセンター、読売文化センター、ヤマハ音楽教室などの講師を勤める。