童謡伝道マガジン「ふんふん」H・U・N企画

今夜のお話なあに

2019.2.3今夜のお話なあに

鼠の相撲

鼠の相撲

 働き者で正直なお爺さんとお婆さんが住んでおり、朝から晩まで一生懸命仕事をしていました。お爺さんは、毎日山に出かけて柴刈りをします。お婆さんはお掃除や洗濯をします。
でも家は貧しくて、お隣の長者さんの御殿と比べると小屋のような家でした。長者さんは自分のことだけを考えるけちん坊で長者になった人でした。
そんなある日のことです。
 お爺さんが山で柴を刈っていると、どこからともなく声が聞こえてきました。それは、
「でんかしょ、でんかしょ」
と聞こえます。
「はて、どんな意味だろう?」
と考えていると、また、
「でんかしょ、でんかしょ」
と聞こえるのです。
 お爺さんは不思議に思いましたが、確かめたくなって声の聞こえるほうへ近づいていきました、するとまた、
「でんかしょ、でんかしょ」
と、かけ声が聞こえました。声のする方に行って、草のかげから覗いてみますと、そこでは鼠が二匹、相撲を取っていたのです。
「これは面白いものに巡り合ったものだ」
 お爺さんは、草のかげでどっこいしょっと腰を下ろして見物することにしました。
 二匹は何度も相撲を取っていました。お爺さんは、相撲を見ているうちにいろいろなことがわかってきました。
太っている鼠は長者さんのとこの鼠で、痩せている鼠はお爺さんの家の鼠だということがわかったのです。おまけに何度も何度も取り組みをする二匹の勝負は、太っている鼠が勝ってばかり、痩せている鼠が負けっぱなしでした。
「なんでうちの鼠が弱いんじゃ。何とか頑張ってもらいたいものじゃ」
 お爺さんは、何とかならんかなと考えました。
「そうじゃ、うちの鼠はろくなものを食っておらん。それに比べて、長者さんのところの鼠はごちそうばかり食っておるんじゃろうな」
「おお、そうじゃ、ごちそうを食わせればいいんじゃ」
 お爺さんは家に帰ってお婆さんにその話をしました。
「それはかわいそうですね。うちの鼠にもごちそうを食べさせてあげましょうよ。お餅はどうですか」
 お婆さんはお餅つきの用意をしました。
「よおし、お餅を腹いっぱい食ったら力が出てくるぞ。そうすれば、長者さんのところの鼠にも勝てるかもしれん」
 二人で力を合わせてお餅をつき、縁の下にそっと置いてやりました。
 お爺さんとお婆さんは、あくる日一緒に草かげに行き、鼠たちの相撲を見ました。
 すると、翌日は痩せた鼠も太った鼠に負けない相撲が取れるようになっていたのです。
 太った鼠が聞きました。
「どうしてそんなに強くなったんだ?」
痩せた鼠は言いました。
「お餅を食べたからだよ」
そこで、太った鼠は、
「今晩、蔵の中からお金を持っていくからお餅を食べさせてくれないか」
と言いました。
 その夜、お爺さんとお婆さんは、二匹の鼠のためにお餅と赤いふんどしを作ってやりました。
 次の日、二匹の鼠は赤いふんどしをしめて
「でかんしょ、でかんしょ」
と言って相撲を取りました。どちらも譲らず、いい勝負が続きました。
 お爺さんとお婆さんは毎日それを見て大喜び。
楽しみが増えるとともに、長者さんのお鼠が持ってくるお金で家も豊かになり、幸せに暮らせましたとさ。

文/もり・けん
1951年大阪市生まれ。
長年勤めた幼児教育出版社を
43歳で退社し、モンゴルに渡る。
自然に添うように生きる遊牧の暮らしを学び帰国。以後モンゴルの正しい理解と亡くしてしまった日本の心を取り戻せと訴え続ける。

日本の童謡の普及のため、作詞(新しい童謡の創作)、演奏(昔からある良い童謡の伝承)の両面で展開、全国各地を講演、ハーモニカによるコンサート活動は海外にも及びモンゴルを始めロシア、中国、北欧のフィンランドやスウェーデンなどの子供たちとも交流している。

文部科学省の財団法人すぎのこ文化振興財団の環境ミュージカル「緑の星」をはじめビクター「ふしぎの国のアリス」などを発表、絵本、童話、童謡など子供のための創作活動をしている。

現在、日本音楽著作権協会会員、日本童謡協会会員、詩人、ミュージカル作家、作詞家、ハーモニカ奏者。梅花女子大学、朝日カルチャーセンター、読売文化センター、ヤマハ音楽教室などの講師を勤める。