童謡伝道マガジン「ふんふん」H・U・N企画

今夜のお話なあに

2018.5.3今夜のお話なあに

舌切雀

 優しいお爺さんと欲張りなお婆さんが住んでいました。お爺さんは雀の子を大事に育てていました。
 ある日、お爺さんが山へ柴刈りに出かけました。お婆さんは洗濯をしようと、糊を作りました。そしてほかの用事をしていると、雀が糊を見つけ、食べてしまいました。
 気づいたお婆さんは、雀の舌をはさみで切ってしまいました。雀は泣きながら山のほうへ飛んでいきました。
 家に戻ったお爺さんはかわいそうに思い雀を探しに出かけました。
「雀、雀、お宿はどこだ」
 お爺さんはあちこちの山を越えて、歩き回りました。
 すると、かわいい歌が聞こえてきました。
「ちっちっち ちっちっち こっちでござる」
 舌を切られた雀が友達も連れて現れました。雀たちの屋敷でお爺さんは、ご馳走になり、雀たちの歌や踊りのもてなしを受けました。
「お婆さんが心配するといけないから、そろそろお暇しましょう」
 そういうと、雀たちはお土産に大きなつづらと小さなつづらを持って来ていいました。
「お爺さんどちらがいいですか?」
「わしも年じゃから小さいほうをもらいます」
 家に着いて、つづらを開けると、小判がいっぱい入っていました。それを見たお婆さんは、
「私が大きなつづらをもらってくるわ」
と、雀のお宿に出かけました。お婆さんは、ご馳走も、ささっと食べて、歌や踊りはいらないといい、お土産は大きなつづらをもらって帰ることにしました。
 しかし、大きなつづらはとても重くて山を越えるに越えられません。お婆さんは山の中でどうにもできないつづらを開けますと、中からは、妖怪や虫や蜂や蛇がわんさか出てきました。お婆さんは妖怪に食べられてしまいました。

文/もり・けん
1951年大阪市生まれ。
長年勤めた幼児教育出版社を
43歳で退社し、モンゴルに渡る。
自然に添うように生きる遊牧の暮らしを学び帰国。以後モンゴルの正しい理解と亡くしてしまった日本の心を取り戻せと訴え続ける。

日本の童謡の普及のため、作詞(新しい童謡の創作)、演奏(昔からある良い童謡の伝承)の両面で展開、全国各地を講演、ハーモニカによるコンサート活動は海外にも及びモンゴルを始めロシア、中国、北欧のフィンランドやスウェーデンなどの子供たちとも交流している。

文部科学省の財団法人すぎのこ文化振興財団の環境ミュージカル「緑の星」をはじめビクター「ふしぎの国のアリス」などを発表、絵本、童話、童謡など子供のための創作活動をしている。

現在、日本音楽著作権協会会員、日本童謡協会会員、詩人、ミュージカル作家、作詞家、ハーモニカ奏者。梅花女子大学、朝日カルチャーセンター、読売文化センター、ヤマハ音楽教室などの講師を勤める。