童謡伝道マガジン「ふんふん」H・U・N企画

今夜のお話なあに

2019.6.2今夜のお話なあに

でんでんむしの悲しみ 原作 新美南吉 文 もり・けん

一匹のでんでんむしがいました。
 ある日のこと、でんでんむしは大変なことに気がつきました。
「私は今まで、うっかりしていたけれど、私の背中にある殻の中には、悲しみがいっぱい詰まっている。この悲しみは、どうしたらよいのでしょう」
 でんでんむしは友達のでんでんむしの所に行きました。
「私はもう、生きていられません」
 でんでんむしは、友達に言いました。
「いったいどうしたのですか」
 友達のでんでんむしは聞きました。
「私は何という不幸せものでしょう。私の背中にある殻の中には、悲しみがいっぱい詰まっているのです」
 すると、友達のでんでんむしは言いました。
「あなたばかりではありません。私の背中にも悲しみはいっぱいです」
 仕方ないと思って、でんでんむしは、別の友達の所へ行きました。すると、その友達も言いました。
「あなたばかりではありません。私の背中にも、悲しみはいっぱいです」
 そこで、でんでんむしは、また別の友達の所へ行きました。こうして友達を次々と訪ねて行きましたが、どの友達も同じことを言うのでありました。
 とうとう、でんでんむしは、気がつきました。
「悲しみは、誰でも持っているんだ。私だけじゃないんだ。私は、私の悲しみを、こらえていかなきゃならないんだ」
 そして、このでんでんむしは、嘆くのをやめたのであります。

文/もり・けん
1951年大阪市生まれ。
長年勤めた幼児教育出版社を
43歳で退社し、モンゴルに渡る。
自然に添うように生きる遊牧の暮らしを学び帰国。以後モンゴルの正しい理解と亡くしてしまった日本の心を取り戻せと訴え続ける。

日本の童謡の普及のため、作詞(新しい童謡の創作)、演奏(昔からある良い童謡の伝承)の両面で展開、全国各地を講演、ハーモニカによるコンサート活動は海外にも及びモンゴルを始めロシア、中国、北欧のフィンランドやスウェーデンなどの子供たちとも交流している。

文部科学省の財団法人すぎのこ文化振興財団の環境ミュージカル「緑の星」をはじめビクター「ふしぎの国のアリス」などを発表、絵本、童話、童謡など子供のための創作活動をしている。

現在、日本音楽著作権協会会員、日本童謡協会会員、詩人、ミュージカル作家、作詞家、ハーモニカ奏者。梅花女子大学、朝日カルチャーセンター、読売文化センター、ヤマハ音楽教室などの講師を勤める。