童謡伝道マガジン「ふんふん」H・U・N企画

今夜のお話なあに

2020.9.1今夜のお話なあに

挨拶がきらいな王さま 前編

「王様、おはようございます」
「王様、こんにちは」
「王様、こんばんは」
「王様、おやすみなさい」
 王様は、朝起きてから、夜寝るまで、挨拶、挨拶のされどおしです。

「ええい、うるさい。いつもと同じ挨拶なんか、しなくていいのだ」
 王様は大臣たちに命令して、国中に、お触れを出しました。

今日からこの国では挨拶を禁止する
挨拶をしたものは牢屋に入れる
王様

 さあ、国中が、大騒ぎです。
 ある朝のことです。牛乳配達のジャックは、パン屋のおじさんに、
「おはようございます」
と言ってしまいました。
「おはよう、ジャック。きみの挨拶を聞くと、いい気持だね」
 パン屋のおじさんが言いました。そのときです。
「こら、今、挨拶をしていたな」
 役人がとんできました。
「王様の命令だ。二人とも牢屋に入れてやる」

 二人は、つかまってしまいました。
 そしてその後に、たくさんの人がつかまり、牢屋はいっぱいになりました。

「ははは~愉快、愉快!」
 王様はこれを見て大喜び。

 すると、どこからか楽しそうな歌声が聞こえてきました。
それは、牢屋の中からでした。

 王様は、牢屋に向かいました。王様は一緒に歌いたくなってきました。


地球が来るんと回ったら
おはようって朝が来る
お日様連れて朝が来る
おはようおはよう
やあおはよう

 いかんいかん。わしは挨拶が嫌いじゃった。挨拶の歌を、歌うなんて、とんでもない。

 王様は急いで、牢屋の傍から逃げ出しました。
 王様は町に出てみました。
 ところが、町にはだあれもいません。
「おおい、みんな、どうしたのじゃ」

※後編に続きます。お楽しみに。

『挨拶がきらいな王さま』は、ずっと、子どもたちに読まれてきた、もり・けんの代表作。
「小学どうとく2」(日本文芸出版、光村図書の教科書)に載っています。
早く結末が知りたい人は、3年生以上の子どもに聞いてみてください。

文/もり・けん
1951年大阪市生まれ。
長年勤めた幼児教育出版社を
43歳で退社し、モンゴルに渡る。
自然に添うように生きる遊牧の暮らしを学び帰国。以後モンゴルの正しい理解と亡くしてしまった日本の心を取り戻せと訴え続ける。

日本の童謡の普及のため、作詞(新しい童謡の創作)、演奏(昔からある良い童謡の伝承)の両面で展開、全国各地を講演、ハーモニカによるコンサート活動は海外にも及びモンゴルを始めロシア、中国、北欧のフィンランドやスウェーデンなどの子供たちとも交流している。

文部科学省の財団法人すぎのこ文化振興財団の環境ミュージカル「緑の星」をはじめビクター「ふしぎの国のアリス」などを発表、絵本、童話、童謡など子供のための創作活動をしている。

現在、日本音楽著作権協会会員、日本童謡協会会員、詩人、ミュージカル作家、作詞家、ハーモニカ奏者。梅花女子大学、朝日カルチャーセンター、読売文化センター、ヤマハ音楽教室などの講師を勤める。