童謡伝道マガジン「ふんふん」H・U・N企画

今夜のお話なあに

2017.12.1今夜のお話なあに

干支の話

 昔々の、ある年の暮れのこと。神様が動物たちにいいました。
「元日の朝、新年の挨拶に来ること。一番早く来た者から十二番目の者までは、順に一年の間、動物の大将とする」
 猫は行けなかったので、鼠に聞きました。鼠はわざと一日遅れの日を教えました。
 さて、元日の朝です。牛は歩くのが遅いので、まだ暗いうちに出発しました。これを見ていた鼠は、ぽんと牛の背中に飛び乗りました。牛が神様の御殿に着きました。まだ誰も来ていません。喜んで待っていると門が開きました。鼠はすかさず牛の背中から飛び込み、一番になりました。牛は二番になったのです。
 その時、虎は、素早く駆け込みました。兎は、寝過ごして、その次になりました。竜は、神様の頭の上から降りるのは失礼だと思って迷っていました。蛇は、木を降りるのに時間がかかりました。馬は、早足でやって来ましたが、みんなが列になっていたので止まってしまいました。羊は、迷い迷い、行きました。猿は、馬に乗って行く途中、ずるいと怒られ、蹴飛ばされてしまいました。鶏は、一番の早起きですが、自分の鳴き声でみんなを起こしてしまったのです。犬は、印をあちこちに付けながら行きました。猪は、まっすぐにしか走れなくて、曲り道などでいったん止まり、時間がかかってしまいました。
 猫は、家で寝ていました。
 こうして、鼠、牛、虎、兎、竜、蛇、馬、羊、猿、鶏、犬、猪の順になりました。
 猫は鼠のいうとおり二日の朝と思ってきませんでした。だから猫は鼠を恨んで、今でも姿を見ると追い回すのだそうです。

文/もり・けん
1951年大阪市生まれ。
長年勤めた幼児教育出版社を
43歳で退社し、モンゴルに渡る。
自然に添うように生きる遊牧の暮らしを学び帰国。以後モンゴルの正しい理解と亡くしてしまった日本の心を取り戻せと訴え続ける。

日本の童謡の普及のため、作詞(新しい童謡の創作)、演奏(昔からある良い童謡の伝承)の両面で展開、全国各地を講演、ハーモニカによるコンサート活動は海外にも及びモンゴルを始めロシア、中国、北欧のフィンランドやスウェーデンなどの子供たちとも交流している。

文部科学省の財団法人すぎのこ文化振興財団の環境ミュージカル「緑の星」をはじめビクター「ふしぎの国のアリス」などを発表、絵本、童話、童謡など子供のための創作活動をしている。

現在、日本音楽著作権協会会員、日本童謡協会会員、詩人、ミュージカル作家、作詞家、ハーモニカ奏者。梅花女子大学、朝日カルチャーセンター、読売文化センター、ヤマハ音楽教室などの講師を勤める。